cathepsin Eはアスパラギン酸プロテアーゼであり血管新生抑制因子のendostatinやTRAILを産生し免疫反応や腫瘍の増殖・転移に関与している。今回我々は生殖免疫と腫瘍免疫との類似性を考慮し反復流産病態におけるcathepsin Eの役割を検討した。 検体は全て患者同意のもとに実験に供した。MOCAc-Pro-Leu-Glyで検量曲線を作成しKYS-1(cathepsin E特異的消光性蛍光基質)を用いたプロテアーゼ活性測定法を確立した。反復流産患者の妊娠初期血清及び頸管粘液中のcathepsin E活性とその後の妊娠帰結とを比較検討した。抗cathepsin E抗体を作製し流産手術時に得られた子宮内容組織を用いウエスタンブロット法と共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光多重免疫組織染色法でcathepsin Eの存在を検討した。 cathepsin E活性が血清中(0.068±0.033U/mg)及び頸管粘液中(0.660±0.342U/mg)で検出された。頸管粘液中のcathepsin E活性は生児獲得群に対し流産群で有意に低値であった。ウエスタンブロット法で脱落膜組織においてcathepsin Eの不活性前駆体型(46kDa)と活性型(43kDa)が検出された。蛍光多重免疫組織染色法では脱落膜細胞に染色性を認め、CD1a、 CD14、 CD83陽性細胞との染色性の一致が観察された。 妊娠初期の脱落膜のマクロファージや樹状細胞などの免疫担当細胞が産生するcathepsin Eの活性化が反復流産病態において重要な役割をしている可能性が示唆された。
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