研究概要 |
本研究は着床に必須であることが証明されている白血球遊走阻止因子Leukemia Inhibitory Fact or(LIF)欠損マウスがGFPマウスの骨髄移植によりドナー由来の子宮内膜細胞を導入することで出産可能となることを証明することが最終目的であった。LIF欠損マウスを探したが、上記の報告者であるStewart CLや国内報告者数人に依頼したが、入手できなかった。そこでマウス実験をあきらめ、臨床研究に変更することにした。LIFは受精卵の着床に関わる重要な因子であり、原因不明不妊症患者の子宮内腔洗浄液中の濃度は低いという報告がある。しかし反復流産におけるLIFの役割に関する報告はない。今回我々は流産病態における子宮内膜着床因子であるLIFの存在と意義を検討した。 自然及び人工流産手術時に得られた子宮内容組織より脱落膜組織を分離し、ウエスタンブロット法でLIFの存在を検討した。また組織からタンパクを抽出しELISA法にてLIFを測定した。さらに反復流産患者の妊娠初期頸管粘液中のLIFをELISA法で測定しその後の妊娠帰結を比較検討した。 ウエスタンブロット法で脱落膜組織においてLIF(45kDa)が検出された。ELISA法にて脱落膜においてLIFが検出されたが、自然流産群(n=42, 8.14±6.7)と人工流産群(n=37, 10.5±8.2)でLIF濃度の有意差は認められなかった。また、反復流産患者の妊娠初期頸管粘液中においてLIFが検出された。頸管粘液中のLIFは生児獲得群と流産群で有意差を認めなかったが、流産群において染色体正常群で低値である傾向を認めた。 今回我々は反復流産患者の脱落膜及び頸管粘液おけるLIFの存在を明らかにした。妊娠極初期における不育症病態において脱落膜が産生するLIFが関与している可能性が示唆された。
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