研究概要 |
生殖能力,とくに量的・質的低下を来たす卵子の加齢変化について科学的に根拠を解明し,抗加齢による少子化対策の構築を検討することを目的として,卵子の受精能,初期胚発生能に関わる卵子の遺伝子発現プロファイリング解析に先立ち細胞分子機構を主導するミトコンドリア(mt)の遺伝子解析を含む探索を行った. 加齢卵子に特異的に生じる変化をヒトおよび動物研究の双方から解明の研究を導入した.ヒトの未受精卵棄却卵および棄却胚についてmt DNA ATPase6をencodeする遺伝子のうち,8993位T→G変異および4977bpに及ぶdeletionについて単一卵細胞における変異比率および定量的検討を行った. その結果,未受精卵,未分割胚でのmt DNAの高い変異比率は検出されなかったが,mt DNA量が分割胚(77×10^4)に比較して減少(62×10^4)している結果を示した.一方,加齢に関して40歳未満(78×10^4)に対し,40歳以上(61×10^4)のmt DNAコピー数を示したことから加齢によるmt DNAの減少による胚発生効率の低下が示唆された.次にゼブラフィッシュの加齢モデルを用いて胚発生の検討を開始した.6時間経過した卵の50%epiploidy Gastula期における胚発生速度の良好胚と不良胚について週齢との関係を検討した.4M,6M,12M,18Mの各週齢で発生速度良好胚が次第に減少する一方で,速度不良胚が増加した.加齢によるヒトおよびモデル動物に関する検討からmt DNAの影響は質的な因子より量的な因子に依存し,胚発生速度の低下として出現することが示唆された.
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