研究概要 |
卵細胞において細胞質ファクターが卵成熟や受精およびその後の初期発生に重要な役割を果たしていることが指摘されており,生命活動に必要なエネルギーである酸化的リン酸化代謝機能を司るミトコンドリア内部には独自の遺伝情報であるミトコンドリアDNA(mtDNA)が存在している.胚が有するmtDNAの変異ヘテロプラスミーを網羅的に解析することを目的として,虚血性心疾患をはじめとする老化における様々な臓器で頻回に認められる8993,8821位などの点変異および4997bpdeletion,ヘテロプラスミーなどの検出をおこなった.しかし未受精卵,未分割胚ならびに分割胚におけるmtDNA質的変異の大きなmutant loadは卵子に検出されなかった.そこで次のアプローチとしてmtDNAの量的解析に向け,コピー数の検出を行った.卵巣において40歳以上でdeletionが増加する報告から,40歳未満の群と40歳以上群とに分け,比較した.未受精卵,未分割胚ではmtDNAcopy数は,40歳未満群(n=15,平均±SE686,224±43,973copy)と比較したところ,40歳以上群(n=1,553,639±46,814copy)において有意に減少を認めた(p=0.048).mtDNAコピー数は妊孕性に大きく影響を与えていることが示唆された.また,良好発育速度の棄却分割胚よりmtDNAの量的解析を行った.Day3の8細胞の分割胚より割球を摘出,割球それぞれのmtDNAコピー数を計測した.同一人物間においてveek分類1と3を比較検討したところ,割球におけるmtDNAコピー数は有意差は認めなかったしかしそれぞれの割球におけるmtDNAコピー数と体積の間においては相関係数0.72であり強い相関を認めた.day3での4細胞分割胚(発育遅発胚)の割球mtDNAコピー数はday3の8細胞分割胚(良好発育速度)より少ない傾向であった.胚における細胞分割速度はmtDNAコピー数とに関係があることが示唆された.
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