B7-H1ノックアウトマウスの肝臓には、PD-1陽性の自己反応性のT細胞が蓄積している。細胞活性を増加させる4-1BB抗体を投与すると肝障害が生じことが解っている。妊娠においても、胎児抗原に対する免疫応答が起こっている可能性が高く、妊娠中の肝臓へのPD-1陽性のT細胞が特異的に蓄積している可能性が高い。そこで、妊娠中の肝臓のPD-1陽性の細胞の増加を調べたところ、微増していることが示唆されたが、特異性がないために判断がし難い。そこで、まず、胎児抗原に対して母体が反応し、有効な細胞性免疫がおこっているかどうかを調べることとした。流産という現象は複雑な因子が関与しているために、母体の胎児特異的細胞傷害性T細胞の活性を直接評価することは難しい。そこで、我々はIn vivo CTL法(詳細は研究計画に記載)を用いて母体の胎児抗原に対するCTL活性を測定した。通常妊娠とAnti-B7-H1 Abs単独投与群では、胎児抗原に対するCTL活性が認められなかった。この結果は、B7-H1のブロッキングのみでは胎児抗原特異的CTLが誘導されない事を示した。通常の妊娠においては、炎症等のdanger signalの欠損により、胎児抗原提示の際の補助刺激シグナルが十分で無いから、CTLが誘導されないと考えられる。そこで、anti-B7-H1 Absと同時にアナジーを解除することが知られている補助刺激シグナルの4-1BB分子に対するアゴニスト抗体を投与したところ、CTL活性が確認された(Fig.2D)。しかし、(肌が誘導されたにもかかわらず胎盤の拒絶は見られなかった。これより、胎盤には胎児抗原特異的CTLから身を守る新たなバリア機構の存在が示唆された。本研究の目的は、胎児免疫寛容における胎児抗原特異的CTLの動態と胎盤のバリア機構を明らかにする事である。
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