本研究は若年女性がん患者の治療寛解後の女性としてのQOL(生活の質)向上を志向した基礎的研究の遂行が全体構想となっている。霊長類であるカニクイザルを用いて、ヒトへの臨床応用を目指したより効率の高い卵巣組織凍結法の確立、より効率の高い卵巣組織の確立、より安全な凍結法と移植法の確立を目的としている。当該年度に実施した研究成果は以下の如くである。 (1)至適なガラス化凍結保存法の開発: 前年度から試行錯誤を繰り返した結果、我々は至適なガラス化凍結保存法の確率に成功した。その評価方法としては、電子顕微鏡像による細胞内小器官の構造の形態異常(ミトコンドリアやリソソーム)の有無を指標とした。 (2)ガラス化凍結保存卵巣の同所性自家移植実験: 新たに当該年度中に1頭のカニクイザルを用いて、大網や後腹膜、子宮漿膜などにガラス化凍結保存卵巣の同所性自家移植した結果、ホルモン周期の回復を確認することができた。続けて、これまで作成してきたガラス化凍結保存卵巣の同所性自家移植個体と本個体を用いて過排卵刺激後に採卵を行い、最終的に世界で初めて霊長類における凍結卵巣組織の自家移植部位からの受精卵の獲得に成功した。 当該年度の研究成果も含めたこれまでの研究成果から、(1)自家移植部位の選定、(2)ガラス化凍結保存法の確立に成功した。 なお、我々はIVFなんばクリニック、近畿大学生物理工学部、イブバイオサイエンスとの共同研究で研究を進めている。
|