卵巣癌に抗腫瘍効果をもつクロフィブリン酸はProstaglandin(PG)E_2をPGF_<2α>に変換するCarbonyl reductase(CR)の発現を増加させることが主な機序である。そこで本研究ではCR導入卵巣癌細胞を作製して腫瘍形成の違いを検討した。CR導入卵巣癌細胞をヌードマウス皮下に移植すると、腫瘍形成をはじめてから2週間はCRを導入しない卵巣癌細胞(コントロール)の腫瘍と同様の増殖を示すが、2週間以降ではCR導入卵巣癌細胞の腫瘍では自然に体積の縮小が認められた。5週間目ではコントロールの腫瘍が80mm^3であるのに対し、CR導入卵巣癌細胞の腫瘍は20mm^2であった(p<0.01)。腫瘍の病理学的検索では、CR導入卵巣癌細胞の腫瘍では明らかに腫瘍壊死の部分が多く、また炎症性細胞の浸潤も多数認められた。CR導入卵巣癌細胞ではCaspase-3の発現が有意に増加しており腫瘍内でのアポトーシス発現が起こっていることが示唆される。そこで、アポトーシス細胞から放出されるeat-me-signalの一つであるMilk fat globule EGF factor 8 (MFG-E8)を調べてみると、CR導入卵巣癌細胞の腫瘍でその発現が著増していることが確認された。したがって、CR導入卵巣癌細胞の腫瘍が自然退縮していく機序は、CR発現細胞がアポトーシスを引き起こし、MFG-E8が放出されマクロファージなどを引き寄せ腫瘍細胞が貧食されることによって腫瘍の退縮がおこる可能性が示唆された。
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