研究概要 |
昨年までに、代表的な子宮内膜癌細胞株であるIshikawa細胞を用いてEstrogen Receptor(ERα)が直接結合する新たな転写制御領域を同定し、その機能解析を行ってきた。そして、ERαが直接結合する領域は非常に広範囲に存在することが明らかになった。それを踏まえて、子宮内膜癌におけるそれらの結合領域を同定し、その機能解析を行った。 まずIshikawa細胞株を培養し、E2処理後にクロマチン免疫沈降(ChIP)クローニングを行い、得られた68のERα結合領域から47標的遺伝子を同定した。次に、同定されたERα転写コアクチベーターであるGlutamate receptor interacting protein 1 (GRIP1)に着目し、E2添加実験を行ったところ約12倍に発現が増強した。また、siRNA法を用いてGRIP1をknock downしたところ、約80%の発現低下が認められ、cell viability assayで死滅細胞数の増加を認めた。そしてWestern blotting法を用いたアポトーシスアッセイを行ったところ、GRIP1 knock down細胞で有意なアポトーシス増加が認められた。さらにflow cytometryを用いた細胞周期分布の解析を行ったところ、GRIP1 knock downによる変化は認められなかった。 以上より、子宮内膜癌細胞株においてGRIP1はアポトーシスを抑制することにより生存細胞数を増加させる可能性が示唆された。今後さらに、他の同定されたCathepsin D, c-Myc, Myogenin等の遺伝子群についても検討を加え、その生物学的動態に及ぼす影響を明らかにしたい。そして、これまでにないERαを介した子宮内膜癌の新たな内分泌療法の可能性を探っていく。
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