研究課題/領域番号 |
20591937
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 豊実 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80344886)
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研究分担者 |
吉川 裕之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40158415)
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キーワード | 子宮頸がん / 卵巣明細胞腺癌 / 静脈血栓塞栓症 / 組織因子 |
研究概要 |
2004年11月から2009年7月に初回治療を行った子宮頸がん患者272名を解析し、治療開始前子宮頸がんVTEの頻度が4.8%(13名)であったことを明らかにした。この13名のうち、治療として手術療法が行われた患者は3名、放射線療法(化学療法同時併用放射線療法を含む)が行われた患者は10名であった。これらの13名には治療開始前に適切な対応を行った結果、周術期、放射線療法中の症候性VTEの発症はなかった。子宮頸がんの治療開始前VTEの危険因子は単変量解析では、60歳以上、子宮頸部病変のMRIにおける長径が50mm以上、FIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)進行期がIV期であることが抽出され、多変量解析でこの3項目はいずれも独立した有意な危険因子であることが判明した。272名に行われた主治療は手術療法が135名(円錐切除7名を含む)、放射線療法もしくは化学療法同時併用放射線療法が124名、化学療法が6名であった。子宮摘出を行った治療開始前にVTEがなかった132名中3名(3.0%)に、術後10日目以降症候性VTEが発生していた。放射線療法を行った治療開始前にVTEがなかった114名は放射線治療中に症候性VTEを発症していた患者はいなかった。この内容の論文を2012年4月中に投稿する。 基礎研究部分の成果はなかなか挙げられなかったが、免疫染色法を確立し2004年から2009年までに組織学的に卵巣明細胞腺癌と確定した59名を対象に組織因子の免疫組織染色が終了した。治療開始前VTE発生患者が多い本組織型では98.3%の患者で組織因子が発現していた。組織因子の染色強度が強くなるに連れて治療開始前D-Dimerの値が有意に高くなっていた。進行期との間には相関はなく卵巣明細胞腺癌ではI期であってもVTEを発症している患者が多いことを裏付けた。また、組織因子の染色強度が強くなるに連れて治療開始前VTEの頻度が有意に高くなっており、明細胞腺癌においては組織因子とVTE発生に関連があることが示唆された。本結果は2012年日本産科婦人科学会にて報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療開始前婦人科がんVTEに関する研究のうち卵巣がんについては本研究開始前に論文化しており症例の追加が順調に進んでいる。子宮体癌は研究期間内に論文化し、今年度は子宮頸癌についても英文紙に投稿直前となっている。基礎研究部分は当初から困難が予想されていたが学会発表レベルとはいえ一定の成果を公表できる様になった。また、治療開始前の婦人科がんVTEの合併については学会発表、ワークショップ、講演を通じて検索対応の必要性をアピールできていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は本研究の最終年度である。これまで4年間に出した成果を論文として公表することが今年度の課題であり、学会発表などを通して更に治療開始前VTEの検索の重要性を普及させる必要がある。本研究を通して、治療開始前にVTEを発見治療しても術後1週間を超えての症候性VTE発症は抑えられないことが課題として出て来た。これへの対策は講じ始めているが、その有効性を見極めるためには今後3年前後は要すると思われる。周術期VTE発症の可能な限り完全な予防法確立のために研究を継続する。また、やっと基礎分野の研究が軌道に乗って来た。この部分についても研究を継続し卵巣明細胞腺癌以外の組織型、子宮体癌についても対象として研究を継続する。
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