研究課題
子宮頸癌に代表されるヒトパピローマウイルス(以下HPV)関連腫瘍細胞は、外来性のHPVウイルス蛋白質E7が癌特異抗原となることから、免疫学的排除が有効な治療戦略といえる。本研究では、子宮頸癌前癌病変(CIN3)が粘膜病変であることに注目し、HPVのE7癌蛋白質を標的にした粘膜免疫を誘導する治療ワクチンを新規CIN3治療薬として実用化できるかを検討することを目的とした。治療薬として乳酸菌Lactobacillus caseiにE7蛋白質を提示した製剤(GLBL101c)をGMPレベルで製剤化し内服薬として用いた。東京大学医学部研究倫理委員会の承認を得て2009年1月からCIN3患者を対象とした第I/IIa探索的臨床試験を開始した。これまでに7例が試験終了し、2例が試験中である。有害事象は全く見られず安全に投与できている。免疫学的検査として子宮頸部局所の粘膜免疫応答を検出する方法を確立した。まず子宮頸部から粘膜型リンパ球(CxL)を分離し、CIN3症例の30例のCxLにおける抗E7-CTLを測定した。CIN3退縮例ではE7-CTL活性が高いことがわかった。そこで、GLBL101cの臨床試験症例について、GLBL101c投与後に、末梢血とCxLのE7-CTLを測定し、CxLに優位にE7-CTLが誘導されていることがわかった。投与量依存性かつブースター効果が確認された。また、コホート3(4cap/day乳酸菌として1g)の3例では、投与後4-9か月で2例がCR、1例がPRとなり、奏効率100%である。CIN3治療(分子標的)薬として実用性が期待できる。
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