研究課題
癌におけるエピジェネティクな遺伝子発現制御機構として、腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域のCpGサイトの異常メチル化よる発現損失が示されてきている。一方で、ゲノム全体の5-メチルシトシンの総量を検討すると、癌ではhypermethylationよりもhypomethylationのほうが実際には上まっている。最近、これまで研究されてきたhypermethylationとは反対に、発癌や浸潤・転移を促進する遺伝子がhypomethylationによって再活性化されることが報告されている。そこで、我々はこれまでに、卵巣癌ではカルシウム結合蛋白のS100A4発現が良性腫瘍に比べて増強していることを見出していることから、脱メチル化によるS100A4発現促進機構を検討することとした。(1)上皮性卵巣腫瘍113例に対して、抗S100A4抗体を用い免疫染色を行い、その発現と、細胞内局在を検討したところ、S100A4核発現陽性は癌で有意に高頻度であった。患者生存期間ではS100A4核陽性症例は陰性例に比し有意に短縮しており(p=0.0045)、多変量解析にて独立した予後因子であった。(2)S100A4低発現卵巣癌細胞にS100A4発現を誘導すると、細胞質のみならず、核にも発現が誘導され、同時に、in vitroでの浸潤能は亢進した。(3)S100A4第一イントロンのこの領域のメチル化有無をbisulfate-PCR-sequence法にて検討した。OSE細胞およびS100A4低発現癌細胞ではメチル化されていたが、S100A4高発現細胞では脱メチル化されており、メチル化の有無がS100A4蛋白発現と相関していた。さらに、卵巣癌組織から採取したDNAを用いて解析した結果も同様に、脱メチル化率が高い症例はS100A4発現が増強していた。(4)卵巣癌細胞を低酸素下で培養すると脱メチル化が郵送された。
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