研究課題
本研究課題は「リガンド非依存性エストロゲンレセプター(ER)経路を有する実験材料(細胞株あるいはDES(ジエチルスチルベストロール)投与モデルマウス)を用いて、その分子基盤を明らかにし、それを標的にする新規薬剤の開発」である。平成22年度は下記のような成果を得た。(1)平成20~21年度にERを器質とするリン酸化酵素Pak 1(P21 activated kinase-1)活性化が卵巣癌において予後不良に寄与していること、その阻害剤であるPAK-18あるいはIvermectinの抗腫瘍効果について明らかにしてきたが、本年度はVAV1の過剰発現によりPak1が活性化することを明らかにした。VAV1蛋白は骨髄系の細胞から発見されたグアニンヌクレオチド交換蛋白(GEFs)であるが、Pak1の活性化の機序としてVAV1-Rac1-Pak1の経路を介していることを明らかにした。次に卵巣癌患者の病理切片を免疫染色した結果、90例中33例(36.7%)のVAV1陽性であった。特に比較的予後良好であると考えられていた臨床進行期I期II期の患者群で検討したところVAV1とPak1陽性患者は再発率が有意に高かった。(2)マウス出生直後にアンドロゲン(5α-dihydrotestosterone,5α-DHT)投与を受けたマウスの膣上皮はDES投与と同様にエストロゲン非依存的に本来のエストロゲンに対する反応性を失った不可逆的な膣上皮の角質化・腫瘍化、子宮の形成不全・扁平上皮を呈した。
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