[研究目的]SCC抗原のもつ様々な生物活性に関して、当教室から報告してきた。しかしながら、SCC抗原の分子作用機構や細胞内結合分子については明らかでなかった。最近、SCC抗原の組み換え蛋白質(GST融合蛋白)を精製し、これと結合する細胞内蛋白を分離し、プロテオーム解析した結果、carbonyl reductase(CR)と同定した。さらに、CRの機能を解析し、リンパ節転移、再発および予後との関連性を検討し、臨床的意義を明らかにする。また、CRを標的とした新たな予後診断法あるいは新たな分子標的治療を開発することを研究の目的とする。以下、平成20年度の研究計画と研究成果を報告する。 1.SCC抗原の結合分子であるCRの抗体を作成し、細胞内局在および組織局在を検討する。 CRの抗原決定部位となりうる場所を選び、合成ペプチドを作成しウサギに免疫した結果、CRのポリクローナル抗体を作成できた。これを用いてケラチノサイトおよびヒト子宮膣部正常扁平上皮を免疫染色した結果、CRは細胞質に局在し、正常扁平上皮の全層性に強く発現していることが明らかとなった。また、子宮頸癌症例を免疫染色した結果、CRの発現が低下している症例では骨盤リンパ節への転移が有意に多く、予後も有意に不良であった(この結果は特許出願し、平成20年8月14日公開)。以上より、子宮頸癌の予後を判定し、追加治療の必要性についてCRの発現状態に応じた個別化の指標となりうることが期待される重要な結果が得られた。 2.CRの強発現および発現抑制による細胞機能を検討する。 CRの機能を解析するために子宮頸部扁平上皮癌培養細胞株SiHaおよびSKGIIにCRのセンスおよびアンチセンスcDNAを遺伝子導入したクローンが得られた。これらを用いて、CRの機能を解析中である。
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