SCC抗原の結合分子としてcarbonyl reductase (CR)を同定した。CRに対する抗体を作成し、細胞局在を検討した結果、細胞質に存在することが明らかとなった。遺伝子導入によってCRの過剰発現および発現抑制を行った結果、CRの発現抑制により細胞の形態は線維芽細胞様の形態に変化し、細胞浸潤能および移動能は亢進した。さらに、CRの発現抑制によりMMPの発現は亢進する、一方、CRの過剰発現ではMMPの発現は抑制された。臨床的意義に関しては、CRの発現パターンをSCC抗原と同様にCRの発現が保たれているstrong pattern、癌細胞すべてが一様に染色されているものの発現程度は正常上皮よりも弱いパターン(weak and homogenous pattern)、正常上皮と同程度の染色性を示す癌細胞と染色性が失われている癌細胞の両者が混在しているパターン(heterogenous pattern)の3パターンに分類できた。発現が低下している細胞が混在するweak and homogenous patternおよびheterogenous patternでは、骨盤リンパ節転移と有意の相関を認めた。また、weak and homogenous patternおよびheterogenous patternでは無進行生存および全生存は有意に低下していた。以上より、CRの発現低下は骨盤リンパ節転移の発症と有意の相関があり、予後不良を示すことが明らかとなった。
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