A549細胞にGFP遺伝子を導入したGFP-A549を作成し、キャリアー細胞としての局所停滞率を検討した。ヌードマウスに移植した人卵巣癌PA-1細胞腫瘍内に、オンコリティックアデノウイルス感染キャリアー細胞を注射し、real time-PCRにてGFPの発現により検討したところ、翌日に腫瘍内濃度が最高となり、1週間まで発現が認められ、2週間後には消失した。これは肝臓等の他臓器においても同様であったが、血液、卵巣には認められなかった。オンコリティックアデノウイルスの発現は、同様に翌日がピークとなったが、血液、卵巣中の発現も認められ、2週間後には消失した。オンコリティックアデノウイルス単独投与に比べ、キャリアー細胞投与ではオンコリティックアデノウイルスの腫瘍内発現量がほぼ10倍となった。抗腫瘍効果判定には、卵巣癌腹腔内播種モデルを用いた。オンコリティックアデノウイルス単独腹腔内投与では、アデノウイルスによる事前免疫なしでは抗腫瘍効果は認められたが、事前免疫して中和抗体存在下では、抗腫瘍効果は認められなかった。このため、アデノウイルスに事前免疫後3週間後にマウス卵巣癌細胞株OVHMを1x10^6個腹腔内投与したマウスを実験モデルとして用いた。OVHM移植後4日目、8日目にアデノウイルスーGM-CSF感染A549細胞を5x10^6個腹腔内投与すると抗腫瘍効果が認められた。今後は、匹数を増加し、抗腫瘍効果をマウスの生存率曲線により評価し、100%のマウスに完全治癒となるよう投与方法を最適化する必要がある。また、OVHM移植後8日目程度の進行例に対しても同様な効果があるか検討し、さらにオンコリティックアデノウイルスとの併用においても、抗腫瘍効果の相乗効果が認められるか検討する必要がある。
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