新たなワクチン用細胞を作成するため、非小細胞性肺癌細胞より限界希釈法により53種類のクローンをスクリーニングし、オンコリティックアデノウイルスを感染したキャリアー細胞としての抗腫瘍効果を抗体存在下において比較検討した場合、従来の最も強力な抗腫瘍効果を示す非小細胞性肺癌細胞株A549の4倍の抗腫瘍効果を有するEHKを樹立した。これから、さらに限界希釈法により35種類のクローンをスクリーニングし、同条件においてEHKより3倍、2倍の抗腫瘍効果を有するEHK-1、EHK-2細胞を樹立し、同条件においてそれぞれA549細胞より9倍、8倍の抗腫瘍効果を示した。ワクチン作用発現のためには、アデノウイルス-GM-CSFの感染あるいは放射線照射が必要であるため、これらの操作を除外できるようにするため、pcDNA3.1-mGM-CSF-GFPを同細胞に導入し、G418によりselectionをし、蛍光顕微鏡によりGFP蛋白発現によりEHK-mGM-CSF細胞を樹立した。同様に293細胞にもmGM-CSFを導入し293-mGM-CSF細胞を樹立した。OVHMマウス卵巣癌腹腔内モデルに対し、両細胞を腹腔内投与したところ、完全治癒症例は認められなかったが、有意の生存期間の延長を認めた。さらに両細胞にオンコリティックアデノウイルスを感染したところ、2回腹腔内投与において有意の生存期間の延長を認めた。完全治癒症例は、さらにEHK-mGM-CSF細胞にアデノウイルス-m-GM-CSFを感染したところ、ほぼ全例に認められ、アデノウイルスがアジュバントとして作用していることが明らかとなった。
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