研究概要 |
子宮がん検診の普及により進行子宮頸癌の頻度は減少し,この40年間で粗死亡率は約1/3になったが,子宮頸癌は依然として婦人科悪性腫瘍の中でも最も頻度が高い疾患である。その病因としてHPV(human papilloma virus)の関与はすでに明らかとなり,子宮頸癌の約90%にHPV感染が認められる。 しかし,HPV感染者のほとんどは癌を発生することはなく,またHPV16あるいはHPV16の転写産物であるE6/E7のトランスジェニックマウス(Tgマウス)においても病変は異形成にとどまり,浸潤癌は観察されない。そこで,HPV感染と同時に起こっているであろう発癌関連遺伝子の異常が近年重要と考えられている。また,現在のところ子宮頸癌の有用な動物モデルは存在せず,その開発が望まれている。われわれは種々の発癌関連遺伝子(c-src,c-erbB2-IGF-1,E2F1)のTgマウスを作成し,これらのマウスにおいて皮膚癌,胆嚢癌,前立腺癌などが発生することを明らかにした。 本研究ではIGF-1を過剰発現させたTgマウス(K5 IGF-1 Tgマウス)における子宮頸癌発生頻度および子宮頸癌組織におけるIGF-1関連分子の発現を解析することで、この動物モデルにおける子宮頸癌発生のメカニズムを解明することを目指している,また,これらの動物実験より得られたデータを基にして,最終的にはヒトにおける子宮頸癌発生メカニズムを解明することを目標としている。 昨年度までに,K5 1GF-1 Tgマウス(12ヶ月齢)では子宮頸部病変は上皮内にとどまるものの (21%,5/24),p53ノックアウトマウス(Koマウス)と交配させることで,浸潤癌が発生することを明らかにした(14%,2/14)。研究期間の最終年度である本年度,K5 1GF-1 TgマウスをPTEN KoマウスおよびBax Koマウスと交配させることで,CIN3(cervical intraepithelial neoplasia 3)の発生をそれぞれ50%(5/10)および63%(5/8)へとより高頻度とすることができた。現在,これらの子宮頸部病変の発生メカニズムのより詳細な解析をすすめているところである。
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