1.ゲンタマイシンによる耳毒性は有毛細胞障害による永久的障害をきたすことが多く、本障害の軽減は患者の治療後のquality of lifeを飛躍的に上昇させる。ゲンタマイシンによる耳毒性に対するneuroactive steroid(neurosteroid)の効果を検討した。estradiol、dehydroepiandrosterone等のneurosteroidが保護効果を有する一方、progesteroneは蝸牛保護効果を有しないことを確認した。estradiolの保護効果に関しては幅広い濃度で認められ、JNK経路の活性化を抑制することにより、アポトーシスによる細胞死を防ぐことが判明した。また、本作用はestrogen受容体を介することを報告した。dehydroepiandrosteroneは同様に広い濃度の範囲でゲンタマイシンによる蝸牛有毛細胞障害を軽減した。本作用にはestorgen受容体は関与しないことを報告した。また、ganglioside等の脂質メディエータの保護効果についても報告し、GM1ガングリオシドおよびGM3ガングリオシドは蝸牛有毛細胞障害を軽減することが分かったが、より高濃度のレンジにおいては逆に蝸牛有毛細胞死を促進する傾向を認め、これらの薬剤の保護効果には濃度依存性が認められることが分かった。Ceramideが蝸牛有毛細胞のアポトーシス促進作用を有する可能性を報告した。本研究は、障害メカニズムの解明、治療法開発を目指しているが、耳毒性と並び問題となる腎毒性に対しても、本研究結果が応用されていく可能性を秘めると考える。 2.耳毒性物質による蝸牛有毛細胞障害から類推される保護機序を考え、音響性障害に対しても、カルシウム拮抗薬、estradiol等の薬物が保護効果を有することを報告した。 3.グルココルチコイド製剤の蝸牛障害に対する保護効果の特徴、限界点を報告した。
|