中耳真珠腫の治療における乳突腔充填術の有用性は広く認知されている。しかし、術後の再建外耳道のトラブルで生じる再形成真珠腫や充填乳突腔内に生じる遺残性真珠腫の発生を危惧する意見もある。本研究では、中耳真珠腫の治療において当科で採用している骨パテ板を用いた再建外耳道の安定性を検証すること、充填乳突腔に真珠腫上皮が遺残した場合の病態推移を明らかにすることを目的に動物実験を行った。当初ブタを使用する予定であったが、実験用動物として入手、使用することが禁止されたため、代替としてマウスを使用した。 まずマウスを用いた動物実験モデルの確立を行った。具体的には中耳骨胞を削開し乳突削開モデルを作成、手技が安定した後に頭蓋骨より採取した骨パテを削開乳突腔に充填した。これにより初めてマウスの乳突腔充填モデルを作成することができた。 続いて充填乳突腔に真珠腫上皮が遺残した場合に起こりうる変化を検証するため、外耳道皮膚を採取、充填乳突腔に移植し、遺残性真珠腫モデルを作成することに成功した。 現在、確立した乳突腔充填モデル、遺残性真珠腫モデルを用い、組織学的な検討を行っている。 本実験ではマウスを用いた乳突腔充填モデル、充填乳突腔内の遺残性真珠腫モデルをはじめて確立することができた。これらの動物実験モデルの確立は真珠腫性中耳炎の成立起序の解明、ならびに手術治療の有用性、安定性の検証に今後大きく貢献するものと考えられる。
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