研究概要 |
本研究では、多くの難聴患者の原因となっていることが予想される細胞外マトリックスの障害による先天性、後天性難聴について、その臨床的特徴を明らかにし、動物モデルを用い難聴のメカニズムを解明し、その治療の可能性を探ることを目的としている。 本年度は、先天性難聴の新たな原因遺伝子・遺伝子変異の検索として、蓋膜構成因子をコードする遺伝子(COL9A1, COL9A2, COL9A3, COL2A1, COL11A1, COL11A2, TECTA)の変異解析を行った。その結果、大規模な難聴家系からこれまで未報告のTECTA遺伝子変異が見つかり、リンケージ解析でも同遺伝子が存在する領域が原因遺伝子の存在部位候補であることが証明されたため、新規難聴遺伝子変異として報告を行った(茂木ら、投稿中)。 また、蓋膜、血管条、ラセン靭帯などに存在する難聴の原因遺伝子(COL9A3, COL9A1, CRYM, KIAA1199, UBA52)から作られるタンパク質の電子顕微鏡的局在について検討し、COL9A3, COL9A1が主に蓋膜に、CRYM, KIAA1199, UBA52が血管条、ラセン靭帯に局在することを明らかにした。遺伝子変異によってそれぞれのタンパクが不完全にできることで、血管条、ラセン靭帯におけるイオンサイクルの破綻や、細胞外マトリックス機構(蓋膜構成因子ネットワーク)の破錠が引き起こされることによって難聴を生ずることが示唆された(Usami et al., 2008)。
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