研究概要 |
本研究では、多くの難聴患者の原因となっていることが予想される細胞外マトリックスの障害による先天性、後天性難聴について、その臨床的特徴を明らかにするとともに、動物モデルを用いて難聴発症のメカニズムを解明し、その治療の可能性を探ることを目的としている。 本年度は、先天性難聴の新たな原因遺伝子・遺伝子変異の検索として、蓋膜構成因子をコードする遺伝子(COL9A1,COL9A2,COL9A3,COL2A1,COL11A1,COL11A2,TECTA)の変異解析を行った。その結果、常染色体優性遺伝形式をとる大きな難聴家系から、これまで未報告のTECTA遺伝子変異が見つかり、リンケージ解析でも同遺伝子が存在する領域が原因遺伝子の存在部位候補であることが証明されたため、新規難聴遺伝子変異として報告を行った。またクローニングを行い機能解析を行っている(茂木ら、投稿中)。 加えて、IX型コラーゲンノックアウトマウスの内耳形態については、これまで透過型電子顕微鏡による解析のみであったが、走査型電子顕微鏡による解析も加え、より立体的にその構造異常と難聴のメカニズムについて解析中である。さらに、レーザーマイクロダイセクションによって蓋膜~内らせん溝細胞のみを摘出し、蓋膜構成因子をコードする遺伝子の発現が蝸牛の回転ごとに異なる可能性があることを解析中であり、この回転ごとの発現差が周波数ごとの難聴レベルの違いに結びついている可能性があると推測している。
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