高等動物のタンパク質で最も多く含まれるコラーゲンは現在までに1~29型までの29種類が40数種類の遺伝子群によってコードされていることが知られている。内耳にも様々なコラーゲンが分布し難聴の原因になっていることが報告されているが、内耳に特異的、あるいは高発現している遺伝子は難聴の原因遺伝子である可能性が示唆される。 マイクロアレイを用いたヒト内耳RNAの発現解析ではtype IXコラーゲンの発現が高いことが報告されており、また、typeIXコラーゲン遺伝子の変異スクリーニングを行って来た結果、難聴患者からCOL9A1およびCOL9A3変異を同定し報告した。さらにtype9 collagen KOマウスでは蓋膜の変形と共に進行性の難聴を呈することが明らかにしてきた。 本研究では、8週齢C57/BLオスマウス3匹(6耳)を使って顕微鏡下で蝸牛膜迷路のみを取り出しRNAを抽出し6耳分のRNAをプールしExpression array(Agilent)に載せ発現解析を行った。コントロールRNAとしてmouse whole body RNA(Agelent)を使用しコラーゲン遺伝子バリアントの発現を検討した。 その結果、Whole body RNAに比して13種のコラーゲン遺伝子が内耳で2倍以上の発現量を呈しておりその中でも6種類が10倍以上を示した。またtype IXコラーゲンではCo19a1が8.8倍Co19a2が17.9倍と高倍率の発現がみられた。また難聴に関連するコラーゲン以外の既知の遺伝子に注目すると、Gjb2が1080倍Cochが869倍など高倍率に認められる反面TectaやSlc26a4など2倍に満たないものも認められた。これらの結果から高倍率を呈しているものは新規の難聴原因遺伝子変異候補として考えられるとともに、内耳におけるコラーゲンの機能を検討する上で重要な情報になると考えられた。
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