老化促進マウス系統において、R系であるSAMR1マウスではげっ歯類特有の正常なサーカディアンリズムを示すのに対し、P系であるSAMP8マウスでは摂水行動のサーカディアンリズムにおいて明らかな異常を示すと言われている。さらにこの現象は明期における照明強度を強くすることで改善することが知られている。そこで、SAMP8を用いて、内リンパ水腫モデルを作成し、サーカディアンリズムが正常な他系列のSAMと比較することで、サーカディアンリズム変調が内リンパ水腫形成にもたらす影響を検討する。今年度は、自発行動量を日内リズムの指標にして、ロコモセンサーを用いて計測し、SAMR1系の対照マウスと比較した。 ヒトにおいては、反復するめまいの改善には日内リズムの是正が有用であることは過去に報告したが、そのメカニズムはいまだ不明である。今回用いたSAMP8マウスにおいて、16-18週齢の比較的若年の段階から、日内リズムの乱れが対照群に比してみられた一方、自発活動の低下は有意ではなかった。こうしたことを基に、SAMP8マウスは日内リズム異常モデルとして有用であることを証明できた。現在、そうしたリズム異常を認めるマウスにおける内耳および中枢神経での低酸素領域を同定する目的で低酸素誘導因子抗体を用いて、両系統マウスで比較検討している。さらに24週齢以上のSAMP8を用いて、内耳形態および低酸素誘導因子の発現を現在解析中である。また、そうしたリズム変調をきたしたマウスを用いて、アルドステロン、バゾプレッシン投与による内リンパ水腫モデルを作成し、その形態学的変化を比較検討している。
|