研究課題
我々はらせん神経節細胞の周囲に存在する衛星細胞をミュータントマウスを用いることにより可視化し、それらの細胞が神経様細胞に分化する能力を持っていることを示している。今回は正常のマウスとヒト難聴のモデル・マウスを用いて衛星細胞の分布がどのように変化するかを調べた。手法;胎生期から生後約2ヶ月齢までのpHes1-d2EGFP、Wnt1-cre;R26CFPのミュータントマウスと難聴マウスとして音響外傷マウスとWnt1-cre;Gjb2DN;R26LacZを作成し、組織学的手法を用いて検索した。結果;衛星細胞はWnt1-cre;R26CFPマウスを使うことで追跡することが出来た。このことは感覚上皮やらせん神経節細胞と由来が異なり、神経堤由来の細胞であることが示唆された。Hes1-d2EGFPを用いることにより、神経に分化する可能性を持つと思われる衛星細胞の数は生後減少することが示された。音響外傷モデルでは衛星細胞は感覚上皮方向へ遊走するように観察された。ひと遺伝性難聴モデルを用いた検討では、衛星細胞からあらたに神経節細胞が作られた形跡は認めなかった。意義;今回の研究からは衛星細胞はらせん神経節細胞と同じ系統の神経節細胞前駆細胞ではないこと、生体内では神経説細胞への分化はおこっておらず、生体内では前駆細胞の役割を果たしていないと考えられる。しかしながら、in vitroではらせん神経節細胞様の細胞へ分化誘導が可能であることから、今後の研究によりinv ivoでの分化誘導により神経節細胞の再生が期待される。
すべて 2011
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J Neurosurg
巻: 114 ページ: 414-25