研究概要 |
ヒトに発現するaquaporin(AQP)の12種のsubtypeの蝸牛、内リンパ嚢での発現を検討した。蝸牛血管条では、AQP 1-3,6,7,9,11、内リンパ嚢ではAQP 1-4,6-9,11の発現が組織科学及びPCRで確認できた。なお、AQP-10,12は、PCR,蛍光染色ともに発現を見なかった。AQP-11発現の局在部位については、血管条では、AQP-11とβ-actinと重染色すると蛍光発色がmergすることより基底細胞に局在することが分かった。一方、AQP-11は辺縁細胞頂部にも発現するが、KCNQ1との重染色ではmergせず、AQP-11は膜蛋白ではないことが推測された。AQP-7,9と同様、AQP-11は辺縁細胞頂部でvesicleのexocytosisを通じて血管条の水代謝に関与しているものと思われる。このことを断定するには、免疫電顕で細胞レベルでの発現部位について追求せねばならないが、今回は断定できる結果を得ることが出来なかった。内リンパ嚢におけるAQP発現の局在についても検討したが、一層の内リンパ嚢上皮全体に瀰漫性にAQPは発現し、必ずしも、ミトコンドリアの豊富な細胞に発現しやすいというような結論は得られなかった。血管条の水代謝は、上述したAQPを構成蛋白とする水チャネルとNKCC2が重要な役割を持つことを示したが、内リンパ嚢でもNKCC1とNKCC2が発現することより、内リンパ嚢でもNa-K-CLのcotransporterが水代謝に重要な役割を担うことが推測された。
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