振子様回転刺激(0.4Hz、最大角速度60度/秒)と体性感覚刺激を同時に加えて、体性感覚刺激が前庭-眼反射におよぼす影響の有無について検討を加えた。体性感覚刺激は、被験者の上腕外側に"コの字型"アームの先に設置した圧力子を軽く接触させた後、これを電磁石の力で被験者の両肩方向に動かすことによって加えた(昨年度作成の体性感覚刺激装置)。体性感覚刺激を加えない状態で回転刺激を20分間加えたものをコントロールとした。眼球運動の記録にはビデオ眼振計を用いた。右回転時は右上腕外側部、左回転時は左上腕(同方向刺激)、右回転時は左上腕外側部、左回転時は右上腕外側部(反対方向刺激)の2通りの刺激法を用いた。垂直軸回転(Earth Vertical Axis : EVA)および偏垂直軸回転(Off-vertical Axis Rotation : OVAR)でそれぞれこれを行い、半規管-眼反射のみならず、耳石-眼反射についても今回は検討を加えた。 EVAで体性感覚刺激を加えた群は、刺激前後で半規管-眼反射の利得の有意な低下を認めた。コントロール群では、刺激前後で利得の変化を認めなかった。一方これをOVARで行った場合では、刺激前後で前庭-眼反射の利得の低下を認めなかった。以上より、半規管-眼反射と耳石-眼反射では、体性感覚刺激に対する可塑性には違いがある可能性を示す結果となった。
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