研究の目的として挙げた2項目について2010年度の成果は以下のとおりである。 (1)好酸球性中耳炎の中耳炎炎症の病期とサイトカイン、ケモカインの状態を調べる:前年度報告したようにTh2関連サイトカインとして化膿性慢性中耳炎に比べてIL5とIL13が有意に増加していた。しかし、耳漏が増加する発作時にIL5の濃度は有意に相関、増加したが、IL13では有意な相関はみられなかった。Th1関連サイトカインとしてIL2、TNF-α、IP-10、MIGを調べた。化膿性慢性中耳炎と好酸球性中耳炎で反応の差は見られなかった。自然免疫に関係するサイトカインであるGM-CSF、IL-6、IL-8、IL-1β、MCP-1を調べた。GM-CSF、IL-6、MCP-1の3種類について化膿性慢性中耳炎に比較して、好酸球性中耳炎で増加がみられた。昨年の結果とあわせて、本研究によって明らかになった好酸球性中耳炎の病態は以下の通りである。好酸球性中耳炎罹患者の中耳腔内においてはTh2炎症が優位な状態にある。発作が生じ、耳漏が増加すると耳漏中の白血球の割合が増すが、同時に好酸球の絶対数も増加する。このとき、Th1関連炎症に関係するサイトカインも検出されるが、化膿性慢性中耳炎と変わらない。一方、自然免疫系は好酸球性中耳炎で化膿性慢性中耳炎に比べ、より活性化されている。この成果は耳鼻咽喉科学の英文学術誌であるActa Otolaryngologica (Stockholm)に掲載予定である。今後の検討課題として、なぜTh2炎症が優位な場が中耳で生じるのか、発作時はどのような機転でおきるか、解明する必要がある。(2)好酸球性中耳炎の診断基準の確立:他施設と協力して診断基準を決めた。この成果は耳鼻咽喉科学の英文学術誌であるANL誌に掲載予定である。詳細は様式C-19の結果報告書を参照すること。必須である大項目として、耳漏中の好酸球を証明することを大項目、4つの特徴を小項目とし、大項目+小項目2つ以上を確実例とした。この診断基準で集積した症例の99%が含まれる。
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