免疫応答の司令塔である樹状細胞の活性化を介して、感染予防に有効な免疫応答を誘導しうるような経鼻ワクチンプロトコールの作成を試みた。 1.Flt3Lによる免疫増幅作用 樹状細胞の増殖因子であるFlt3Lをマウスに対し、単回経鼻投与すると上気道の粘膜免疫誘導組織であるNALTにおいて、成熟樹状細胞が増加した。興味あることに、経腹腔免疫でも樹状細胞は誘導されたが、投与方法により、誘導される樹状細胞サブセットが異なっていた。次にFlt3L投与後にインフルエンザ菌の外膜タンパクP6で3回経鼻免疫を行ない、抗原特異的免疫応答および鼻咽腔からのインフルエンザ菌排除効果について検討した。その結果、経鼻Flt3L+経鼻P6投与により粘膜系IgAおよび全身系IgGが誘導され、インフルエンザ菌のクリアランスも促進された。Flt3Lの経鼻アジュバントとしての有用性が示唆された(Vaccine 2010)。 2.NKT細胞と樹状細胞による免疫誘導 NKT細胞は樹状細胞の成熟を促進させ、両者の双方向性の細胞間相互作用は免疫応答において重要である。NKT細胞のリガンドであるa-GalCerをアジュバントとして用い、抗原P6とともに経鼻免疫を行ない、抗原特異的免疫応答について検討した。その結果、NALTにおいてNKT細胞および樹状細胞の増加を認め、両者の細胞間協調の場がNALTであることが示唆された。a-GalCerをアジュバントとして用いることで強力な免疫応答が誘導され、インフルエンザ菌の排除効果も著明であった。新しい経鼻ワクチンの可能性が示唆された(Vaccine 2010)。
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