研究課題
基盤研究(C)
気道粘膜上皮は、イオンや高分子物質の輸送機能だけではなく、バリア機能を持ち、生体の恒常性維持を担っている。従来、免疫学的バリア機能に重点がおかれがちであったが、原点に戻り、物理的バリア機能に焦点をあて、新しい視点からの鼻粘膜バリア機能の評価法について検討をおこなった。気道上皮バリア機能を評価するため、in vitroでは、短絡電流、上皮膜抵抗の、in vivoでは、鼻粘膜水分蒸散量、上皮間電位差の測定系を確立し、種々の検討を引き続きおこない、以下の結果を得た。鼻粘膜だけではなく、ヒト咽頭粘膜でも、上皮間電位差が測定可能となった。また、酸ストレスにより咽頭上皮間電位差であらわされる電気的バリア機能は低下し、中性塩化亜鉛で回復する傾向を示した。プロトンポンプインヒビターを内服することにより、塩化亜鉛局所処置による回復効果は増強する可能性が示唆された。細菌感染およびウイルス感染のモデルとして、初代培養上皮細胞をリポポリサッカライド(LPS)、poly(I:C)でそれぞれ刺激したところ、上皮膜抵抗が減少し、電気的バリア機能が低下したことが示唆され、感染時のバリア機能の低下を示す指標となると考えられた。陽性荷電を有するキトサンなどのポリカチオンでは、上皮膜抵抗が減少したが、陰性荷電を有するヘパリンなどのポリアニオンでは変化を認めなかった。この結果は、ドラッグデリバリーシステムの観点からも重要な知見であると考えられた。一方、LPS、poly(I:C)刺激後、ヘパリンを投与すると、上皮膜抵抗の減少は回復した。難治性気道疾患に対してヘパリン局所投与による治療が有用である可能性が示唆された。
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