研究概要 |
マイクロRNAはより大きなサイズを持つヘアピン構造の前駆体から切り出される22塩基程度の1本鎖RNAであり,翻訳の阻害やターゲットmRNAの安定性に影響を及ぼすことで,遺伝子発現をマイナスに制御する.ヒトでは数百種類のマイクロRNAの存在が報告されており,それぞれのマイクロRNAが複数のターゲット遺伝子を制御しているとされる.マイクロRNAの潜在的な役割については,マイクロRNAの発現パターン解析が腫瘍の予後予測と治療法選択に役立つ可能性が示唆されている.北海道大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座では、喉頭扁平上皮癌細胞株HEp2から樹立したドセタキセル耐性HEp2細胞株を用いて、ドセタキセル耐性におけるマイクロRNAプロファイリングの対象とした。 「ドセタキセル感受性/耐性細胞間のマイクロRNA発現差異の検討」として網羅的マイクロRNAプロファイリングを行い,ドセタキセル感受性細胞には発現せず耐性細胞のみに発現しているマイクロRNAとして,hsa-miR-218,hsa-miR-424*,hsa-miR-520h,hsa-miR-526b*,hsa-miR-550*,hsa-miR-629*,hsa-miR-767-5p,hsa-miR-875-5p,hsa-miR-93*を同定した.このうちhsa-miR-218は子宮頸癌細胞にてヒト乳頭腫ウイルス16型感染によりその発現が低下することや,非小細胞性肺癌においてしばしば低発現あるいは欠損しており,Paxillinの発現制御を介して腫瘍悪性度に関与する可能性が報告されている.
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