β1インテグリンは共刺激因子としてT細胞の活性化にも関与するとされ、近年種々の自己免疫疾患においてその関与が指摘されている。しかし、本疾患における扁桃リンパ球でのβ1インテグリンの検討は行われていない。そこで、掌蹠膿疱症(PPP)の扁桃および術前、術後の末梢血リンパ球におけるβ1インテグリンの発現について検討したところ、PPP群では反復性扁桃炎(RT)群と比較して扁桃および末梢血CD4陽性T細胞におけるβ1インテグリンの発現が有意に高かった。次に、溶連菌刺激による扁桃CD4陽性T細胞におけるβ1インテグリンの発現を検討したところ、PPP群では溶連菌刺激によりβ1インテグリン陽性CD4陽性T細胞の有意な増加を認めたが、RT群では有意な変化を認めなかった。次に、扁桃CD4陽性T細胞にVCAM-1を添加して細胞遊走能を検討した。その結果、PPP群がRT群に比較し有意に高い遊走能を認めた。次に、扁桃摘出術前後での末梢血CD4陽性T細胞におけるβ1インテグリンの発現変化をみたところ、PPP群では、術後での末梢血CD4陽性T細胞におけるβ1インテグリンの発現が有意に低下していたが、RT群では有意な低下は認めなかった。次に、皮膚におけるβ1インテグリン陽性CD4陽性T細胞の浸潤とVCAM-1の発現をみたところ、PPPの病巣皮膚ではCD4陽性T細胞の浸潤が多数認められ、その同一視野でβ1インテグリン陽性細胞が認められたが、健常皮膚ではほとんど認められなかった。同様に病巣皮膚ではVCAM-1陽性の血管内皮が多数認められたが、健常皮膚ではほとんど認められなかった。以上の結果から、PPPの発症機序としてPPP扁桃のCD4陽性T細胞では溶連菌に対する過剰免疫応答の結果、β1インテグリンの発現が元進し、それを共刺激因子として更なる活性化をきたし、体循環へ放出され、VCAM-1を発現した病巣皮膚血管に付着し、病巣内へ浸潤する可能性が示唆された。以上をJ Clin Immunol誌に掲載した。
|