喉頭の重要な機能のひとつである発声運動について、発声時の喉頭運動を生成する神経ネットワーク機構を解明するため、ウレタン麻酔モルモットを用いて発声運動の誘発を行った。内喉頭筋である甲状被裂筋と輪状甲状筋、横隔膜、腹筋の筋電図および発声時音声の記録を行い、吸気活動と呼気活動のリズミカルな反復運動パターンおよび呼気時に見られる内喉頭筋および腹筋の特徴的な筋活動パターンにより発声活動を同定した。発声運動の誘発は脳幹の電気刺激および化学刺激によって行い、発声を誘発することのできる脳幹部位のマッピングを行った。微小タングステン電極を用いて刺激頻度100Hzの連続電気刺激を行った結果、中脳中心灰白質領域から橋腹外側部を経由し延髄後疑核領域に至るまで連続して発声誘発部位が存在することがわかった。一方、微小ガラス管電極を用いてグルタミン酸またはGABA拮抗薬であるビククリンによる化学刺激を行った結果、中脳中心灰白質領域において発声が誘発された。中脳中心灰白質領域の化学刺激により発声誘発が可能であったことから、発声時におそらく運動性皮質からの下行性投射により駆動されると考えられるニューロンの細胞体が中脳中心灰白質に存在し、さらに電気刺激により中脳中心灰白質領域から延髄後疑核領域まで連続して発声誘発が可能であったことから、これらの中脳中心灰白質ニューロンが橋腹外側部を経由し後疑核領域へ投射している可能性が示唆された。
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