本年度は(1)培養細胞を用いた研究、および、(2)上咽頭癌生検組織を用いた研究を遂行した。本研究においては、抗癌剤(5-FUおよびCDDP)を用いてEBウイルスの複製サイクルを誘導する点がポイントの一つであるが、これらの抗癌剤は濃度により細胞にアポトーシスを誘導することが知られている。本年度は、本研究を遂行していくために、これらの抗癌剤によりアポトーシスが誘導されずにEBウイルスが複製サイクルに誘導されることの検証を目的とした。 (1) 培養細胞においでは、予定した5-FU 5μg/mlおよびCDDP 1μg/mlによる処理では、アポトーシスと思われる所見を認めなかった。 (2) 化学放射線治療を予定された上咽頭癌4例において、治療開始前の上咽頭癌組織、および第1コース目の化学療法終了時の上咽頭癌組織、を採取した。化学療法は5-FU (800mg/m2/日*5日)ののちにCDDP(50mg/m2/日*2日)を施行した。HE染色では、アポトーシスに特徴的な、濃縮した核の像はわずかに散見される程度であり、これらの薬剤によりアポトーシスが積極的に誘導されていることは示唆されなかった。 次年度以降は、EBウイルスの複製サイクルの誘導について検討を進め、ガンシクロビル併用の有効性の検証を進めていく予定である。
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