研究概要 |
がん組織の中には幹細胞と同じように自己複製能と分化能を有する少数のポピュレーション(癌幹細胞)が存在し、この癌幹細胞により癌が形成・維持されているという癌幹細胞仮説が現在注目されている。頭頸部扁平上皮癌における癌幹細胞の同定、分離のために、既に報告されているCD44を癌幹細胞のマーカーとして頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いて研究を進めた。下咽頭癌細胞株Gun-1をserum free mediumとEGF+FGF存在下に培養することによりCD44+細胞を約40%まで増殖させることができた。このCD44+細胞は癌幹細胞のマーカーとして報告されているCD133やABCG2も発現し、tumor sphereを形成することがわかった。更にmagnet beadsによって分離されたCD44+細胞はCD44-細胞に比べて増殖能、遊走能、浸潤能が有意に高く、抗がん剤に対する感受性は低下していた。抗がん剤感受性に関与する遺伝子を解析したところ、ABCG2以外にABCB1, CYP2C8, TERTの発現が亢進していた。またTNF-αやTRAIL、放射線照射などのアポトーシス誘導刺激に対する感受性の低下も認めた。このように癌幹細胞は治療抵抗性に関わっていることが示唆される。 一方、CD44+細胞のHLA class I分子の発現はCD44-と比べて変化は認められなかったが、class II分子はCD44+細胞で発現を認め、さらにTAP2分子の発現の低下を認めた。サイトカイン産生を調べたところTGF-β, IL-8, G-CSFの産生も亢進しており免疫抑制を誘導する役割を演じている可能性がある。そのため、現在制御性T細胞やmyeloid-derived suppressor cellsとの関連について検討を進めている。
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