進行頭頸部癌治療においては機能温存治療が優先される傾向にある。タキサン系抗癌剤を含めた化学療法も選択肢のひとつである。しかしながら、抗癌剤に対する耐性の獲得も認められ限界もある。その耐性獲得機序のひとつとして、癌幹細胞による抗癌剤耐性があることが明らかになりつつある。また、頭頸部癌幹細胞であるCD44+細胞は、docetaxelをはじめ各種抗癌剤に対してCD44-細胞に比較して抵抗性を示すことが我々の研究で明らかになっている。前回、頭頸部癌由来の細胞株Ca9-22(口腔扁平上皮癌株)およびGun-1(下咽頭扁平上皮癌株)を用いて、CD44+細胞(頭頸部癌の幹細胞である)とCD44-細胞に分け、タキサン系薬剤耐性遺伝子TRAG-3(Taxol-resisitance-associated gene-3)の発現をPCRにて検討した結果、CD44+およびCD44-いずれの細胞株においてもTRAG-3発現に明らかな有意差は認めなかった。そこで、癌幹細胞の免疫学的制御機序についてさらに検討した。その結果、CD44+細胞を共存させるとT細胞の増殖が抑制され、特にIFN-g(Th1反応)が強く抑制される一方、IL-10産生は逆に増強された。以上より、癌幹細胞は制御性T細胞を優位に誘導し、免疫監視機構から逃避することを可能にする細胞集団であると考えられた。したがって、癌幹細胞のTRAG-3以外の薬剤耐性機構として、免疫抑制を介した機序も考慮する必要があると思われる。
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