研究概要 |
乳頭腫ウイルス関連の腫瘍はウイルスの受容体が基底細胞に発現しているため、病変が上皮に限局している。しかし癌化が生ずると異型細胞は上皮下に侵入してゆく。上皮細胞の特徴をもっていたものが生物学的な変化をおこして間葉系細胞の性質をもつようになる。この過程を研究することによって上皮間葉移行のメカニズムをしることができるようになる。この上皮間葉移行は癌細胞が浸潤するときにおこる癌の進行の特徴である。上皮間葉移行は多くの因子が関与しているが、その機序はいまだ不明である。乳頭腫ウイルスは良性のパピローマをおこし、それは癌化して扁平上皮癌へと変化する。そこでパピローマ組織と癌化した組織(時間のずれがあるが、同一の人からの組織で行った。)でRHO AおよびRHO Cタンパクの差およびTwistやSnailの発現の差をみた。またp53の発現の差を検討した。 (1)HPVはパピローマ組織からはtype 6,52,58が検出されたが、頭頸部癌に多いHPV 16は検出されなかった。しかし日本人の子宮癌に多いHPV 52,58が検出されたことは癌化の可能性を示唆した。 (2)p53はHPV関連癌では異常発現はみられなかった。このことはHPV関連癌は放射線や化学療法によく反応し、予後が良好であることを示唆した。 (3)TwistとSnailの発現について、パピローマと癌あるいは癌の中心部と辺縁部の部位の差の有無を検索中である。 (4)癌組織辺縁部すなわち浸潤のポテンシャリティーを持つ細胞とその周辺のリンパ球について生物学的な差があるかリンパ球の表面マーカーを検索中である。
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