研究概要 |
本研究の目的は本邦における頭頸部癌のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の関与を明らかにするとともに、HPVのE6,E7遺伝子に対するアンチセンスRNAを導入することによって細胞増殖を抑制し遺伝子治療の開発に結びつけることである。HPV-E6,E7遺伝子に対するアンチセンスRNAウイルスベクターは当初予定していた国内調達が困難となったため、共同研究者の白川により作成し、細胞株への導入を予定し現在実験継続中である。既に行ったミシガン大学より譲渡されたHPV16陽性等頸部扁平上皮癌細胞株を用いたE6,E7遺伝子に対するsiRNA導入実験においては、E6,E7遺伝子それぞれが抑制されるとともに、p53、Rbの発現が高くなり細胞増殖の抑制とアポトーシスが誘導されることが確認された。現在、in vivoでの効果を確認するため動物実験継続中である。これらの研究成果は2011年アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会での発表を予定すると同時に論文発表予定である。本邦における頭頸部癌のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の関与に関しては現在も症例集積中であるが、現段階では中咽頭癌の40%にHPVが認められている。以上のことから、HPV-E6,E7遺伝子に対するアンチセンスRNA導入は中咽頭癌患者に対する治療戦略として期待できると考えられ、今後さらなる研究を計画し、成果を報告する予定である。
|