本研究では嚥下障害患者の病態および重症度を各種の嚥下機能検査により、多角的かつ定量的に評価し、嚥下障害の病態や重症度に関する客観的な判定基準を作成する。そして、この判定基準に基づいて、嚥下障害の予後予測、ならびにリハビリテーションや外科的治療の適応を含めた標準的な治療指針の立案を行うことを目的とする。 平成20年度においては、嚥下内視鏡検査による嚥下機能のスコア評価基準を作成した。これは、「喉頭蓋や梨状陥凹の唾液貯留」、「声門閉鎖反射・嚥下反射の惹起性」、「着色水嚥下時の嚥下反射惹起性」、「着色水嚥下後の咽頭クリアランス」を0〜3の4段階にスコア評価するものである。このスコア評価基準を嚥下障害患者に適用して嚥下機能の評価を行ったところ、嚥下障害の病態や重症度を評価する上で極めて有用であることを確認した。嚥下内視鏡検査のスコア評価基準の作成は、嚥下障害の評価法として重要な意義を持つ。 嚥下造影検査では、録画した造影検査所見から嚥下の咽頭期における喉頭挙上のタイミングや挙上距離、食道入口部の開大度を2次元運動解析ソフト(DIPP-Motion Pro 2D)を用いて定量的に計測した。その結果、喉頭挙上のタイミングの遅れと嚥下障害の重症度には相関が認められた。本ソフトによる画像解析では、多数のパラメータを短時間に同時解析することができる利点があり、今後、定量的および客観的な嚥下機能評価法としてさらに検討を加える予定である。 ワレンベルグ症候群などによる嚥下障害患者を対象とした予後因子の検討では、特にリハビリテーションの限界を規定するものとして下咽頭や喉頭の感覚障害の程度が重要であることが明らかになり、感覚障害が高度の例は外科的治療の適応になると考えた。
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