研究概要 |
平成21年度までに行ったDPD(Dihydropyrimidine dehydrogenase)とTS(Thymidilate synthase)の発現と頭頸部癌のフッ化ピリミジン系抗癌剤(5-FU)感受性の関連を検討するin vitro研究からDPD発現が低いほど、TS発現が低いほど頭頸部癌細胞の5-FU感受性は高いという結果が得られた。またDPD発現は癌細胞増殖能に影響しないがTS発現は細胞増殖能に影響することがわかっていた。 その後、頭頚部癌(舌癌、上顎癌)症例の組織サンプルにおけるDPD,TSのmRNA発現レベルを検討し、当科で行っているフッ化ピリミジン系抗癌剤を用いた放射線化学療法も含めた集学的治療による治療効果、予後も含めた臨床病理学的因子との間での解析を行った。その結果、DPD,TSは正常の舌組織に比し舌癌腫瘍組織での発現が有意に高いこと、舌癌組織のDPD、TS発現レベルは患者の臨床病期、腫瘍の病理学的分化度、頸部リンパ節転移の有無とは相関がないことがわかった。 また、舌癌患者、上顎癌患者の予後に腫瘍のTS発現レベルの高さが有意に相関している(癌におけるTSレベルが高いほど予後が不良)ことが臨床検体を用いた解析からわかり、平成21年度までに報告してきたin vitroにおける研究結果との一致をみた。頭頸部癌に対するオーダーメイド放射線化学療法として、腫瘍におけるTS発現が治療法選択に有用である可能性について内外の学会において報告した。 今後本研究の最終目的の1つである-5FU(TS-1)併用の放射線化学療法感受性が高いと予測される患者さんの選択法の確立-が実際の臨床現場において可能であるか、検証が必要である。
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