過年度までの研究により、従来のネコに代わり、モルモット(ginea pig)を用いてもfictive swallowing modelを確立することが可能となった。そこで、21年度はこのモデルを用いて、上喉頭神経や舌咽神経などの抹消感覚入力の有無と、嚥下時のニューロン活動のパターンから延髄に存在する嚥下関連ニューロンを同定し、さらに、神トレーサー注入を行い、これらのニューロンの延髄内局在や軸索投射様式についても観察を行った。 実験にはウレタン麻酔非動化モルモットを用い、HRPおよびneurobiotinで満たされたガラス微小電極を延髄内に刺入し、上頭神経の電気刺激に応答するニューロンの細胞外記録を行った。上喉頭神経の連続刺激によりfictive嚥下を誘発し、そのときの活動変化を記録することにより、嚥下関連ニューロンを同定した。その後、記録電極より前述のトレーサーを電気泳動的に注入し、動物を灌流固定後に薄切標本を作製し、免疫染色にて細胞形態と軸投射を観察した。 嚥下関連ニューロンの活動様式には、嚥下運動に同期して発火頻度が増加するパターン、嚥下運動中に上喉頭神経からの順行性応答が抑制されるパターンが存在した。また、ニューロンの細胞体は、孤束核とその周辺および延髄網様体に存在しており、さらに孤束核およびその周囲への投射、延髄網様体への投射、疑核・舌下神経核近傍への投射が確認された。 以上のように、モルモットにおける延髄嚥下関連ニューロンの、活動様式とその局在および投射様式が確認された。これらのニューロンが機能的にも形態的にも複雑なネットワークを形成し、嚥下の運動出力パターンを形成している可能性が示唆された。
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