平成20年度の結果では、線維芽細胞は、癌幹細胞の生存・自己複製・癌細胞産生を促進した。平成21年度は、癌幹細胞に対する脂肪細胞の影響を同様に検討した。それによると、線維芽細胞とは異なり、癌幹細胞の生存・自己複製率・癌細胞産生に関しては、抑制傾向が見られたが、統計学的な有意差が得られなかった。脂肪細胞のアディポカイン産生が実験毎にバラツキがあり、その点の解析が未だ不十分である。脂肪細胞ではなく、脂肪組織での実験を試みており、平成22年度は脂肪組織の影響を解析する。また、培養系でのcDNA microarrayによる網羅的遺伝子解析と癌幹細胞への候補遺伝子産物の蛋白やその阻害剤(抗体など)の投与実験により、間質細胞誘導性の癌幹細胞の細胞動態の仲介因子を同定する予定である。さらに、癌幹細胞と間質細胞の組み合わせによるスキッドマウスへの移植実験、喉頭癌組織の免疫組織化学解析により、造腫瘍能・転移形成・ニッチ形成における間質細胞の役割を解明し、ニッチ細胞の同定を試みる。
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