研究概要 |
加齢白内障は、喫煙・紫外線・酸化的ストレス等が危険因子とされているが、これらは水晶体上皮細胞(LEC)の遺伝子変化を引き起こし、LECの持つ代謝、抗酸化機構・分化に障害が生じ、水晶体混濁つまり白内障を発症すると推測される。近年、蛋白質コード遺伝子のsilencingに働くmicroRNA(miRNA)があり、そのRNA機能は多くの生理過程の制御で基本的な働きを担うことが明らかにされている。このmiRNAは、蛋白質をコードしないが、機能性RNAとして標的蛋白質の主に翻訳レベルにおいて、様々な遺伝子発現を制御している。本年度の研究では、まず胎生16日、生後4、16週齢のSprague-Dawleyラット水晶体上皮細胞のRNAを、採取しmiRNAの網羅的発現解析を、Agilent社製のMicroarray解析にて施行した。このアレイは少量のRNA量から解析できるという点で、大変有用な方法である。生後2倍以上、発現が上昇したmiRNAは、rno-miR-204, miR-339-3p, let-7b, let-7c, miR-29a, miR-29cであった。生後2倍以上、発現が減少したmiRNAは、rno-miR-551b,451, 126であった。これらの結果は、リアルタイムPC法にて確認し、同様の結果が得られた。また、白内障動物モデルである、Shumiya Cataract Rat水晶体では、白内障を有する水晶体上皮細胞において、miR-29a, miR-29c, miR-126の発現が有意に減少していた。これらの結果より、水晶体の発達、白内障発症に、miRNAの関与があることが示唆された。今後、ヒト白内障試料を採取し、白内障とmiRNAの関与を検討する。これら結果が得られれば、白内障発症メカニズムの解明につながる可能性がある。
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