研究課題/領域番号 |
20592043
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 誠 神戸大学, 医学研究科, 講師 (80273788)
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研究分担者 |
根木 昭 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00189359)
金森 章泰 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10444572)
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キーワード | 緑内糖尿病網膜症 / 網膜神経節細胞 / 水チャンネル / アクアポリン / グリア細胞 / アストロサイト / 高眼圧 |
研究概要 |
糖尿病自然発症トリイ(SDT)ラット網膜では、神経変性とグリア細胞活性化に同調して、水選択チャンネルアクアポリン(AQP)1と4の発現パターンが変化することを報告していたが、今回さらにAQP0発現の局在が変化することを見出した。すなわち、糖尿病未発症において、AQP0の発現は、双極細胞とアマクリン細胞の細胞体、神経節細胞層近接の神経終末、ならびに網膜神経節細胞の細胞体に限局していた。これに対して、神経節細胞死が有意に増加し、グリア細胞が活性化する40週においては、網膜神経線維もAQP0を発現し、しかも、視神経に入ると同時にその発現は消失していた。このような変化は、実験的高眼圧モデルラット網膜には見られなかった。AQP0は選択的水チャンネルとしての働きに加えて、細胞接着にも関与し、これをノックアウトすると網膜電図の振幅が減弱することが知られている。AQP0は網膜内の高次神経間での情報伝達に必須の役割を果たしている可能性がある。 一方で実験的高眼圧モデルでは、視神経内のアストロサイトと網膜神経節細胞細胞体に発現しているAQP9が消失した。球後視神経ではAQP4も発現するのに対して、視神経乳頭部ではAQP4ないしその他のAQP蛋白は発現していないため、AQP9が視神経乳頭部で発現する唯一のAQPであった。AQP9はaquaglyceroporin familyに属し、水以外にも乳酸やグリセロールなどの溶質を輸送する。近年、乳酸はブドウ糖と同様に、アストロサイトから神経細胞へ供給されるエネルギー基質としての役割を果たすことが知られるようになった。よって高眼圧は、視神経乳頭での水チャンネル発現を消失させることで神経変性を招来している可能性が考えられる。このように糖尿病と高眼圧は異なるAQPアイソフォームの発現を変化させ、独自の網膜神経変性を来たしている可能性を示した。
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