研究概要 |
眼窩制御靭帯(プリー)の位置異常(heterotopy)が非共同性斜視の原因であるという仮説を検証することを目的に、この研究を行った。 初年度(平成21年度1は、高精度MRIと画像解析ソフトを用いて、正常者における4直筋プリーの2次元座標位置を算出し.非共同性斜視の直筋プリーと比較するためのコントロールを得た。正常者20眼を対象に、眼窩MRI冠状断を撮像し、眼球赤道部から約9mm後方の直筋重心から直筋プリーの位置を求めた。水平方向は耳側、垂直方向は上方を+、眼球中心を0とした時の各直筋プリーの位置(水平、垂直:平均±標準偏差mm)は、内直筋(-13.45±0.71,-1.66±0.72)、外直筋(9.71±0.72,-2.58±1.02).上直筋(-1.62±0.99,10.15±0.54)、下直筋(-4.85±0.91,-12.79±0.96)であった。直筋プリーの位置は垂直水平方向において個体差がなく安定していた。日本人のみを対象に正常者における直筋プリーの2次元座標位置も算出し、他の報告と比較した。日本人においても、正常者の直筋プリーの垂直・水平位置成分は、個体間でバラツキが小さく、安定していることを確認した。 次に、外眼筋手術がプリーに及ぼす影響について検証した。斜視患者10例10眼を対象に、下斜筋後転、上斜筋前部前転、下斜筋前転の3種類の手術前後の患側直筋プリーの位置を解析し、手術による影響を調べた。下斜筋後転(6眼)、および上斜筋前部前転(1眼)後の直筋プリーについては、明らかな位置偏位を認めなかった。黄斑移動術後の内方回旋複視に対して行った下斜筋前転(3眼)では正常の1SDを超える位置偏位を2カ所以上の直筋プリーで認め、結果として、プリー・リングに外方回旋偏位が生じた。通常の斜視手術では直筋プリーの影響は小さいが、特殊な手術では影響があることを示した。
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