研究概要 |
本研究は角膜上皮創傷治癒過程における神経ガイダンス因子であるSemaphorin3Aの機能解析を目的とし、まず、当年度は神経ガイダンス因子が角膜上皮細胞の分化過程をどの様に制御しているかを角膜上皮細胞、あるいは実質細胞を用いて培養細胞でのSemaphorin3Aの発現および機能解析を行った。 特に、角膜上皮創傷治癒過程での細胞同士が互いに及ぼす影響、その中でも上皮細胞から分泌される因子が実質細胞内のSemaphorin3Aの発現に及ぼす影響、さらに、角膜実質細胞でのSemaphorin3Aの発現をsiRNA-またはover-expression系を用いて、細胞内でSemaphorin3Aの発現を人工的に増加させ、その時の角膜上皮細胞内で起こる細胞分化に伴った蛋白質発現などをコラーゲン膜を用いた共培養系でRT-PCR, Western Blotによる手法で検討した。 その結果、角膜上皮細胞から分泌されるEpidermal Growth Factor (EGF)が角膜実質細胞内のSemaphorin3Aの発現に重要な働きをしていること、また、角膜実質細胞内のSemaphorin3Aの強発現により、角膜実質細胞から分泌されるSemaphorin3Aが角膜上皮細胞内のAdherent Junction蛋白質であるE-cadherin, N-cadherinの発現にもっとも重要であることが明らかになった。このことは、E-cadherin, N-cadherinが上皮細胞の分化にもっとも重要なkey factorであることから角膜でのSemaphorin3Aの局在の意義と角膜上皮細胞や実質細胞機能の調節にSemaphorin3Aが大きく関連していると考えられ、角膜細胞の恒常、機能に神経性因子の役割を解明するための大きな前進であることが示唆された結果である。さらに、in vivo実験系で動物モデルを使った実験でもwound healingの段階でSemaphorin 3Aの発現が増加していることが示唆され、神経ガイダンス因子であるSemaphorin3Aは角膜創傷治癒過程でもっとも重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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