研究概要 |
前年度に引き続き、in vitroの系でSeV/ΛMウイルスベクターのヒト網膜芽細胞腫(RB)細胞株(Y79, WERI-Rb-I)への遺伝子導入効果について検討した。SeV/ΛMベクターの濃度をMOI=50, 100, 200まで高くしたが、RB細胞への遺伝子導入効率はMOI=25の場合と比較して改善されなかった。RB細胞株ではSeV/ΛMベクターの感染に必要なレセプターの発現が低下している可能性を考え、低酸素や炎症性サイトカインなどの刺激下にSeV/ΛMベクターの感染を試みたが、改善を認めなかった。以上の結果より、SeV/ΛMベクターのRB細胞への感染・遺伝子導入は困難と考えられた。一方で、別の細胞株(網膜色素上皮細胞株)などへは高効率に遺伝子導入が可能であることから、これらの細胞に抗腫瘍作用を持つ液性因子(IFN-βなど)を遺伝子導入し、パラクライン作用によってRBの増殖を抑制する方法が可能と考えられた。 In vivoの系では、RB細胞株(Y79, WERI-Rb-1)とマトリゲルの混合液を、重症免疫不全(SCID)マウス皮下に接種することにより、疾患モデルを確立することに成功した。RBの接種後、皮下の腫瘍塊は1カ月にわたり徐々に増大し、術者あるいはマウス個体による腫瘍径にも大きな違いがなく、治療実験に応用可能と考えられた。現在、本モデルを用いて、SeV/ΛMベクターの抗腫瘍効果について検討中である。
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