研究概要 |
(1)ぶどう膜炎モデル、網膜虚血再潅流モデルでの組織障害の検討 ぶどう膜炎モデルはエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(Endotoxin-induced uveitis, EIU)を用いた。Lewisラット足蹠にLPSを注射することによりEIUモデルを作成した。炎症スコアおよび前房中のタンパク濃度、細胞数はいずれも24時間をピークとした。抗好中球エラスターゼ抗体を腹腔内および硝子体内に投与し、炎症の強さの変化を見た。LPS注射後24時間での炎症のスコア(6点満点)はEIUのみ起こした群で平均4.8だったのに対し抗好中球エラスターゼ抗体を硝子体内に投与した群では3.6に低下し、前房タンパク濃度は38%減少した(P<0.01)。網膜虚血再潅流モデルはS-Dラット視神経鞘を縫合糸で結紮し虚血とした後、1時間後に開放して作成した。14日後に眼球摘出し網膜のHE染色標本を作製したところ、網膜虚血再灌流ラットでは網膜厚は著明に減少していた。抗好中球エラスターゼ抗体を硝子体内に投与すると網膜厚の減少は平均31%抑制された。 (2)両モデルでの白血球動態に関する検討 (1)で作成したモデルに関してacridine orange digital fluorography (AODF)を行い、白血球動態を記録した。EIUモデルではLPS注射後24時間の時点で網膜への白血球の集積が著明にみとめられた。抗好中球エラスターゼ抗体を硝子体内に投与した群では視野あたりの白血球数の平均値がEIUのみの群に比べて15%減少していた。網膜虚血再灌流モデルにおいても再灌流後24時間での1mm^2あたりの白血球集積数は平均823から抗好中球エラスターゼ抗体を硝子体内に投与した群では646と22%減少した。
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