本研究においてこれまでにエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)および網膜虚血再灌流傷害のモデルにおいて、好中球エラスターゼ(NE)阻害剤の投与により、炎症の抑制と組織傷害の軽減が得られることを見出した。白血球の網膜内集積が減少することもわかった。また、網膜虚血再灌流モデルではNE阻害剤の投与によってVEGF産生が抑制された。網膜虚血再灌流モデルでは網膜血管内皮におけるICAM-1発現も検討したが、NE阻害剤による有意な変化は見られなかった。以上の結果をふまえ本年度は白血球の網膜血管内皮細胞に対する接着性に対するNEの役割に注目して研究を進めた。研究方法として培養ヒト網膜血管内皮細胞(HREC)を用い、これをシート状に培養したのちに健常人から採取したヒト白血球を加え一定時間培養し、接着細胞を計測する方法を用いた。培養中に高グルコース負荷を与えると、HRECに接着する白血球数は増加した。高グルコースに加えNE阻害剤を添加したところ、わずかに接着数が減少したものの、有意差はなかった。以上の結果からHRECと白血球の接着性にはあまりNEが関与していない可能性が考えられた。NEによる組織傷害を説明する一つの可能性として、HRECに対するNEの作用によるHRECでの細胞内活性酸素産生を検討した。培養HRECにNEを添加したのち、HRECの細胞内活性酸素測定を行った。NEを添加したHRECでは細胞内の活性酸素の上昇がみとめられた。
|