研究概要 |
【目的】局所ERGのPhotopic negative response(局所PhNR)には、局所網膜の網膜神経節細胞に由来し、緑内障眼ではその振幅が選択的に低下する(Machida et al.,IOVS,2008)。そこで今回、局所PhNRの緑内障診断における感度および特異度を検討した。 【方法】開放隅角緑内障(OAG)114例114眼および正常42例42眼を対象とした。Hodapp-Parrish-Anderson分類に従って、OAG眼を早期、中期および晩期にステージ分類した。局所ERGは、直径15°の刺激スポットを用いて、黄斑部とその上耳側ならびに下耳側から記録した。ROCカーブを作成し、likelihood ratioが最大になるようにcut-off値を設定して、局所PhNRの感度および特異度を求めた。三箇所の刺激部位のいずれかで局所PhNRがcut-off値以下の場合に緑内障とし、三箇所全てで局所PhNRがcut-off値を上回った場合に正常とした(combined criterion:CC)。 【結果】局所PhNR振幅は緑内障のステージが進むに従って有意に低下した(P<0.0001)。PhNR振幅およびPhNR/b比の特異度は、記録部位ならびにステージにかかわらず90%以上であった。早期群(n=31)の局所PhNRの感度は58.1~80.7%であった。CCを用いると、局所PhNR振幅およびPhNR/b比の感度は、それぞれ90.6および96.9%に有意に改善した(P<0.05)。中期(n=51)さらに晩期(n=31)と進行するに従って、個々の刺激部位での感度は上昇した。 【結論】早期緑内障における局所PhNRの感度は、個々の刺激部位では高くはない。しかし、数箇所から記録した局所PhNRを総合的に診断すると、高い感度および特異度が得られた。従って、局所PhNRは早期緑内障の診断に有用な他覚的検査であると考えられた。
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