糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の発症に小胞体ストレスが関与することが示唆されている。糖尿病網膜症の黄斑浮腫では網膜色素上皮細胞のtight junctionに変化が起きていると考えられる。また加齢黄斑変性では網膜色素上皮細胞の加齢や脆弱性が脈絡膜新生血管発生をおこすと考えられる。そこで、網膜色素上皮のtight junctionが小胞体ストレス下でどのように変化するかを検討した。 培養ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE19)に小胞体ストレスを惹起するTunicamycin(TM : 1μg/ml)及びThapsigargin(TG : 1μM)をそれぞれ添加し、6、12、24、48時間後にmRNA、蛋白発現を検討した。その結果、TMおよびTG負荷で小胞体ストレス発現の指標であるGRP78/BipおよびCHOP mRNAは6、12、24、48時間後有意な上昇を示し、TM及びTG負荷で小胞体ストレスが生じていることを確認できた。Tight junctionのZO-1はTG負荷においてmRNA及びタンパクレベルで有意な上昇、Occludinとclaudin-1はTM及びTG負荷でmRNA及びタンパクレベルで有意な上昇を認めた。網膜色素上皮の経上皮電気抵抗測定(Transepithelial electorical resistance : TER)を行うとTERが増加しており、ERストレスで透過性が低下していることが示唆された。 さらに糖尿病網膜症の治療に使用される抗VEGF抗体(Bevacizumab)硝子体内投与後の全身および非投与眼のVEGF濃度を測定した。その結果、Bevacizumab硝子体内投与後、全身を介して非投与眼にも影響があることがわかった。
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